母子家庭の手当・助成・生活サポート

日本のシングルマザーは、2010年度総務省調べで108万人以上いると算出されました。

離婚が約80%、未婚が12%、死別が7%程度という内訳です。

2010年(平成22年)の数値とは異なりますが、平成25年の厚生労働省の調べによりますと、全国の総世帯数が5011万2千世帯でそのうち「母子家庭」は82万1千世帯(1.6%)にあたります。

婚外子の増加

母子家庭となる家庭で、未婚女性による出産、婚外子の出産率が増加しています。

世界各国で婚外子の割合が急増しているのですが、日本はかなり低い方で、子どもは結婚してから産むもの、子どもができたら結婚するもの、という文化が定着していることが要因として考えられます。

日本以外の欧米の婚外子率は高いですが、結婚に伴う法的保護や社会的信用が結婚していなくとも与えられているという側面と、若者が未婚でも後先考えずに子どもを生めば後は何とかなる(国、社会が何とかする)という側面の両面があると考えられます。

また、日本では結婚するにあたり、健康診断などの証明をする必要がなく、両者の合意により、紙切れ一枚で結婚、離婚が容易にできるということもあり、結婚に対するハードルが低い国とも言えます。

しかしながら、やはり婚外子についての偏見や風当たりはいまだに強く、生活的にも困窮している家庭が増えているのです。

ただ、2005年には未婚の日本人の父と外国人の母の間にうまれた子どもに日本国籍を認める判決がおりた例があり、2013年には婚内子と婚外子の相続が同等であると判決された例もあります。

こうした判決をみると、日本でも徐々に婚外子を社会的に認知してく方向に向かっていると思われます。

一方で、ひとり親家庭の貧困率は6割と高く、収入は平均181万円。非正規雇用は半数以上となります。そのため、国や地自体による助成、手当なども増加傾向にあり、あらたな扶養手当などが検討されている状況とのことです。

ひとり親家庭の手当、助成金

母子家庭父子家庭において受給することのできる手当金や助成金は、全部で16項目に及びます。簡単にまとめてみましょう。

すべての「児童を養育する」家庭で受給可能な手当

児童手当 日本国内に住む0歳以上中学卒業までの児童が対象です。
乳幼児や義務教育就学時の医療費助成 日本国内に住む0歳以上中学卒業までの児童が対象です。

すべての低所得家庭で受給可能な手当

年金・国民年金保険の免除 所得が少なく、保険料を納めることが困難な場合、本人の申請によって免除する制度が設けられています。
生活保護 健康で文化的な最低限度の生活を保障できない収入の家庭に支給されます。

母子家庭・父子家庭において受給可能な手当

児童育成手当18歳までの児童を扶養するひとり親家庭が対象です。

児童扶養手当 ひとり親家庭などの児童のために、地方自治体から支給されます。
遺族年金 片方の親と死別した場合に支給されます。加入している社会保障制度や家族構成によって受取額は異なります。
住宅手当 20歳未満の児童宇扶養しているひとり親家庭の世帯主で、一定以上の家賃を払っている家庭に対して自治体から支給されます。
ひとり親家族等医療費助成制度 ひとり親家庭に対し、医療費の一部が助成される制度です。
交通機関の割引制度 ひとり親家庭などは、交通機関の割引制度があります。
粗大ゴミ等処理手数料の減免制度 児童扶養手当(母子家庭・父子家庭において受給可能な手当の1)を請けている世帯には、粗大ゴミ等呂利手数料の減免制度があります。
上下水道の減免制度 児童扶養手当を受給している世帯には、水道基本料金や、料金の一部が免除される場合があります。

母子家庭または父子家庭で受給可能な手当

保育料の免除と減額 ひとり親家庭の支援制度として、自治体ごとに保育料の免除や減額があります。
所得税、住民税の減免制度 寡夫または寡婦控除という名目で、納税者本人が、妻や夫と死別、または離婚・生死不明の場合で、生計を同じくする子どもがいる家庭で適用されます

特定の条件を満たす家庭で受給可能な手当

特別児童扶養手当 障害を有する20最未満の児童の保護者に対して支給されます。
非課税貯蓄制度(マル優) 障害者手帳の交付者、障害年金受給者、遺族年金受給者、寡婦年金受給者、児童扶養手当受給者の一定の条件を満たした利子所得を非課税にする制度。

以上の手当や助成金の受給が可能ですが、所得や家庭状況により、制限される場合もあります

そしてこれらのほとんどが申請を必要とする制度です。お住まいの自治体によって異なりますので、まずは役所でご相談をされることがよいと考えられます。

ひとり親家庭」「母子家庭」「父子家庭」という言葉が入り混ざっていますが、助成や手当においてはすべて同じ意味をさします。自治体などの表記が異なるためで、実質はかわりません。

 

助成だけでは救えない、ひとり親家庭の困難さ

ひとり親家庭は、たいていの親が仕事を持っています。

現在、保育園待機児童の問題についても大きく報道されていますが、ここにはひとり親家庭の幼児の保育も大きく影響しているのです。

保育園の入園資格、優先度は、ひとり親家庭の順位が高くなります。

しかしながら、保育時間帯などは延長保育などを使用してもフルタイムで働く親にとっては「短すぎる」時間であり、遅刻・早退・欠勤・残業不可などの制約を受けます。

せっかく保育園に入園することができても、ふたり親家庭、単身家庭の人とは同等に働くことがというのが実情です。もちろん延長保育などをおこなう保育園にいれることによる保育料増加も見逃してはならない問題です。

ひとり親家庭では、以上の問題などにより収入は低くなり、収入増額の道も狭くなります。

子どもが大きくなるにつれて、親の児童扶養の手間は減りますが、助成金などは減額されます。子どもが大きくなるにつて、学費などの費用は大きくかさみますが、子どもが幼児時代に収入が増えなかったツケがまわり、依然、困窮したままの世帯が多くなるのです。

これは主に母子家庭において顕著に見られます。

女性は子どもを産み、育てる存在という旧来の考え方が依然として日本にははびこっています。それにともない、社会での進出を阻まれ、非正規雇用でしか働けないという実情があります。

乳幼児をかかえた母親は、先述したとおり、遅刻・早退・欠勤・時短などの問題があり、企業は正規社員としての採用をしぶる傾向にあります。

これが、より「母子家庭」「シングルマザー」の貧困を生むのです。

厚生労働省の平成23年(2015年)の母子世帯等調査結果報告によると、以下のような衝撃的な数値が発表されています。

  1. 平均年収223万円(児童扶養手当等除く181万円)
  2. 就業率80.6% (非正規率47.4%)
  3. 貧困率54.6% (全体16%、大人2人以上の世帯12.4%)
  4. 生活保護受給率14.4% (2011年被災3県含まず)
  5. 雇用保険未加入率40.0%
  6. 児童扶養手当受給者98万人
  7. 健康保険未加入率5.9%
  8. 公的年金未加入率16.1%
  9. 養育費を受け取っている19.7 %
  10. 貯金平均金額50万円以下50.0%

一見、多数の助成金や手当を受けている家庭が多くあるように見られますが、自分で申請しなくてはならない助成金などもあり、実際に受給できる手当をすべて受けていない家庭もあるのです。

これらの問題を対処するには

現在、貧困家庭の子どもは、塾に通えないなどの学習面で不利な状況に置かれ、学力不足で高校進学をあきらめる生徒や、進学しても授業についていけずに中退する生徒が多数います。

また、同じく学費が払えないことが原因となり、高校進学をあきらめたり、中退する生徒もいます。

現在、生活保護世帯やそれに準じた世帯の子どもに、無料で勉強を教える学習支援の取り組みが各地で広がっています。おもにNPO団体が、厚生労働省の補助事業を活用しています。

元教員などが支援員となって家庭を訪問して、学習環境の整っていない子どもに参加を呼びかけたり、大学生ボランティアが中心となって学習指導にあたっているようです。

こどもへの支援はほんの少しではありますが、先行きが見えてきています。ところが、問題は親への支援です。現在ある手当の拡充や各種学校費用の無償化、社会保険料や税の負担の軽減などが提案されましたが、先送りにされている状態です。

日本はほかの先進諸国に比べて、所得が低い人に対しても社会保険料や税の負担が大きく、大して、低所得者対策が不充分であると考えられています。

この問題を解決するために、ひとり親家庭の貧困層の改善に重点的に予算を配分するなどの対策をすすめることを進言がされています。

ひとり親家庭、ひいては子どもの貧困問題は、単に経済的に苦しいというだけでなく、不登校や学力低下、虐待など、子どもの成長を妨げる影響を与えます。

そうした問題を放置することは、将来の社会保障や労働力を減らすことにもつながります。

ひとり親家庭への充分な助成。・手当・支援が拡充するよう、世の中に求めていきたいと思います。